工業高校の電気科で学ぶ工学は大学レベルのものです。なぜこの公式が導出されるのかを考える前に、公式を覚えて紐解いていきましょう。
半導体と半導体素子に関する知識
真性半導体
シリコンやゲルマニウムの結晶を、99.999999999 [%] (イレブンナイン)の純度まで精製した半導体のことをいう。
n形半導体
真性半導体に5価の原子(ヒ素、リンなど)を微量混ぜ合わせると、電子が1個あまり、結晶中を自由に移動する自由電子となる。
また、この5価の原子をドナーという。
p形半導体
真性半導体に、3価の原子(ホウ素、ガリウムなど)を微量混ぜ合わせると、電子が1個不足し、正孔が生じる。
この3価の原子をアクセプタという。
ダイオード
A:アノード K:カソード
順方向電圧の場合は電流が流れる。
逆方向電圧の場合は電流がほとんど流れない。
用途
電源回路の整流回路、高周波信号からの検波回路、スイッチング回路など
可変容量ダイオード(バリキャップダイオード)
逆方向電圧の大きさにより静電容量が変化する。
定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)
降伏電圧付近での定電圧が発生する。
発光ダイオード(LED)
順方向電流により発光する。
トランジスタ
E:エミッタ C:コレクタ B:ベース
npn形トランジスタ
pnp形トランジスタ
FET(電界効果トランジスタ)
接合形FET
nチャネル
S:ソース D:ドレーン G:ゲート
pチャネル
S:ソース D:ドレーン G:ゲート
MOS FET
nチャネル
pチャネル
トランジスタの特性と増幅回路に関する公式
h定数(hパラーメータ)
入力インピーダンス
h_{ie}=\frac{\Delta V_{BE}}{\Delta I_B} [\Omega] $$
電圧帰還率
h_{re}=\frac{\Delta V_{BE}}{\Delta V_{CE}}
$$
電流増幅率
h_{fe}=\frac{\Delta I_C}{\Delta I_B}
$$
出力アドミタンス
h_{oe}=\frac{\Delta I_C}{\Delta V_{CE}} [S] $$
hパラメータによるトランジスタ等価回路
上記の回路を次の等価回路に変換することが可能である。
電圧
増幅度
A_V=\frac{V_o}{V_i}
$$
利得
G_V=20・log_{10}A_V [dB] $$
電流
増幅度
A_I=\frac{I_o}{I_i}
$$
利得
G_I=20・log_{10}A_I [dB] $$
電力
増幅度
A_P=A_V A_I
$$
利得
G_P=10・log_{10}A_P [dB] $$
バイアス回路
2電源方式
固定バイアス
自己バイアス
電流帰還バイアス回路
負帰還増幅回路に関する公式
負帰還について
信号の一部を入力へ戻すことを帰還といい、入力信号と帰還信号の位相が逆走のとき負帰還という。
また、位相が同位相のときは正帰還という。
特徴
・周波数特性の改善
・内部雑音や歪みが減少する
・電源電圧の変動の影響を受けにくい
欠点
・増幅度が低下する
・特定周波数で発振を起こす
増幅回路の増幅度
A_0=\frac{V_0}{V_i-V_f}
$$
帰還回路の帰還率
\beta=\frac{V_f}{V_o}
$$
負帰還増幅回路の増幅度
A=\frac{A_0}{1+\beta A_o}
$$
発振回路に関する公式
発振回路について
発振回路は増幅器の出力の一部を、ある条件を満たして帰還をかけることによって作ることができる。
発振条件
利得条件
A≥1
$$
位相条件
正帰還
発振回路の種類
LC発振回路
同調形発振回路
f=\frac{1}{2\pi\sqrt{LC}} [Hz] $$
コルピッツ発振回路
f=\frac{1}{2\pi\sqrt{LC_0}} [Hz] $$
C_0=\frac{C_1 C_2}{C_1+C_2} [F] $$
ハートレー発振回路
f=\frac{1}{2\pi\sqrt{L_0C}} [Hz] $$
L_0=L_1+L_2+2M [H] $$
CR 発振回路
位相発振回路
f=\frac{1}{2\pi\sqrt{6}RC} [Hz] $$
ブリッジ形発振回路
f=\frac{1}{2\pi RC} [Hz] $$
水晶発振回路
発振周波数が極めて安定する。
演算増幅器に関する公式
演算増幅器について
次のような条件を持った増幅回路を演算増幅器(オペアンプ)という。
・直流から交流まで増幅ができ、増幅度\(\ A\ \)が非常に大きい
・入力インピーダンス\(\ Z_i\ \)は非常に大きく、出力インピーダンス\(\ Z_0\ \)は非常に小さい。
・入力が作動入力になっている
理想的なオペアンプ
A \rightarrow \infty , Z_i \rightarrow \infty , Z_0 \rightarrow 0
$$
反転増幅回路
入力と出力の位相が反転する
V_0=\frac{R_f}{R_i} V_i
$$
非反転増幅回路
入力と出力の位相は同位相である。
V_0=\frac{(R_f+R_i)}{R_i}V_i
$$
加算回路
V_0=-R_f\left(\frac{V_1}{R_1}+\frac{V_2}{R_2}\right)
$$
演算回路
V_0=\frac{R_f}{R_i}(V_2-V_1)
$$
パルス回路に関する知識
基本パルス波について
T:繰り返し周期\ [s] T_w:パルス幅\ [s]\\
A:パルス振幅\ [V],[A] f:繰り返し周波数\ [Hz] $$
トランジスタのスイッチング作用
エミッタ設置の回路において次のことが成り立つ。
・\(\ I_B=0\ [mA]\ \)にするとコレクタ-エミッタ間はOFF(遮断)
・\(\ I_B\ \)を十分い流すとコレクタ-エミッタ間はON(導通)
マルチバイブレータ
非安定マルチバイブレータ:方形パルスの発生
単安定マルチバイブレータ:一発パルスの発生
二安定マルチバイブレータ:メモリ、カウンタ、レジスタ
微分回路
積分回路
波形整形回路
クリップ回路
入力信号のあるレベル以上または以下を切り替える回路
クランプ回路
入力信号の0Vレベルを変える回路
電力増幅回路に関する公式
小信号増幅回路の比較
・使用するトランジスタの特性で最大コレクタ電流や最大コレクタ損失の値が非常に大きな値になっている。
・動作範囲も最大定格の範囲内でほぼ全領域を利用して動作させる。
・回路構成が電力損失の少ない変成器結合増幅回路やプッシュプル増幅回路などが用いられる。
A級電力増幅回路
トランジスタの動作てんを負荷線のほぼ中央の位置にいいて動作させる方法
入力信号を加えない時でも常に\(\ I_{CP}\ [A]\ \)のコレクタ電流が流れて\(\ I_{CP}・V_{CC}\ [W]\ \)のコレクタ損失が生じている。また、理想的な場合でも電源効率は50%である。
負荷抵抗
R_L=\left(\frac{n_1}{n2}\right)^2R_S [\Omega] $$
コレクタ電流平均
I_{CP}=\frac{V_CC}{R_L} [A] $$
コレクタ損失
P_C=P_{DC}-P_{om} [W] $$
最大出力電力
P_{om}=\frac{1}{2}V_{OC}I_{CP}=\frac{V_{CC}^2}{2R_L} [W] $$
電源電力(平均)
P_{DC}=V_{OC}I_{CP} [W] $$
電源効率
\eta_m=\frac{P_{om}}{P_{DC}}
$$
B級プッシュプル電力増幅回路
トランジスタの動作てんをカットオフ点において動作させる方法で、2このトランジスタを組み合わせて使用する。
入力信号が加わらない時は、コレクタ電流が流れないため、非常に効率のいい回路と言える。また、理想的な場合でも電源効率は78.5%になる
負荷抵抗
R_L=\left(\frac{n_1}{n_2}\right)R_S [\Omega] $$
コレクタ電流平均値
I/{CP}=\frac{V_{CC}}{R_L} [A] $$
コレクタ損失
P_C=\frac{1}{2}(P_{DC}-P_{om}) [W] $$
最大出力電力
P_{om}=\frac{I_{CP}}{\sqrt{2}}・\frac{V_{CC}}{\sqrt{2}}=\frac{I_{CP}V_{CC}}{\sqrt{2}} [W] $$
電源電力
P_{DC}=\frac{2}{\pi}I_{CP}V_{CC} [W] $$
電源効率
\eta_m=\frac{P_{cm}}{P_{CD}}
$$
クロスオーバーひずみ
トランジスタの\(\ V_{BE}-I_B\ \)特性のわん曲した部分を使用するために、出力波形が合成されたとき、そのつなぎ目で発生するひずみのこと。