工業高校電気科で使われる『交流回路』の公式集【後編】

工業高校の電気科で使われる『交流回路』に関連する公式まとめ【後編】

工業高校の電気科で学ぶ工学は大学レベルのものです。なぜこの公式が導出されるのかを考える前に、公式を覚えて紐解いていきましょう。

複素数に関する公式

\(\ a+jb\ \)のような(実数+虚数)の形の数を複素数という。ここで、\(\ j\ \)を虚数単位といい、数学的には\(\ i\ \)に該当します。
虚数単位の定義は次のような式を満たす\(\ j\ \)を求めることで導出される。

$$
j^2=-1
$$

四則演算

加法

$$
(a+jb)+(c+jd)=(a+c)+j(b+d)
$$

減法

$$
(a+jb)-(c+jd)=(a-c)+j(b-d)
$$

乗法

$$
{(a+jb)}\times{(c+jd)}=(ac-bd)+j(ad+bc)
$$

除法

$$
\frac{a+jb}{c+jd}=\frac{{(a+jb)}\times{(c-jd)}}{{(c+jd)}\times{(c-jd)}}=\frac{ac+db}{c^2+d^2}-j\frac{bc-ad}{c^2+d^2}
$$

ベクトル表示

X軸を実軸、Y軸を虚軸にした平面を複素平面という。

ベクトル

$$
\vec{A}=a+jb
$$

ベクトルの絶対値(大きさ)

$$
A=\sqrt{a^2+b^2}
$$

偏角

$$
\theta={tan}^{-1}\frac{b}{a}
$$

曲座標表示

$$
\vec{A}=A\angle\theta
$$

指数関数表示

$$
\vec{A}=A\varepsilon^{j\theta}
$$

複素数\(\ \vec{A}\ \)の極形式

$$
\vec{A}=A\angle\theta_1=A\varepsilon^{j\theta_1}   \vec{B}=B\angle\theta_2=B\varepsilon^{j\theta_2}
$$
$$
\vec{C}=\vec{A}\vec{B}=AB\angle(\theta_1+\theta_2)=AB\varepsilon^{j(\theta_1+\theta_2)}\\
\vec{D}=\frac{\vec{A}}{\vec{B}}=\frac{A\angle\theta_1}{B\angle\theta_2}=\frac{A}{B}\angle(\theta_1-\theta_2)=\frac{A}{B}\varepsilon^{j(\theta_1-\theta_2)}
$$

複素数の交流回路への応用に関する公式

複素数インピーダンスとオームの法則

インピーダンス

$$
\vec{Z}=\frac{\vec{V}}{\vec{I}} [Ω] $$

電圧と電流のベクトルを次のように仮定する。

$$
\vec{V}=V\angle\theta_2 [V]   \vec{I}=I\angle\theta_1 [A] $$

これらを用いるとインピーダンスは次のようになる。

$$
\vec{Z}=\frac{V\angle\theta_2}{I\angle\theta_1}=\frac{V}{I}\angle(\theta_2-\theta_1)=\frac{V}{I}\varepsilon^{(\theta_2-\theta_1)} [Ω] $$

インピーダンスの大きさ

$$
Z=\sqrt{R^2+{X_L}^2} [Ω] $$

R・L・C回路の複素インピーダンス

R回路

$$
\vec{Z}=R+j0=R [Ω] $$

L回路

$$
\vec{Z}=0+j\omega L=j\omega L [Ω] $$

C回路

$$
\vec{Z}=0+\frac{1}{j\omega C}=-j\frac{1}{\omega C} [Ω] $$

R-L回路

$$
\vec{Z}=R+j\omega L [Ω] $$

R-C回路

$$
\vec{Z}=R+\frac{1}{j\omega C}=R-j\frac{1}{\omega C} [Ω] $$

RLC直列回路

電圧
$$
\vec{V}=\vec{V_R}+\vec{V_L}+\vec{V_C}=R\vec{I}+j\omega L\vec{I}-j\frac{1}{\omega C}\vec{I}
=\left\{R+j\left(\omega L-\frac{1}{\omega C}\right)\right\}\vec{I} [V] $$

インピーダンス
$$
\vec{Z}=R+j\left(\omega L-\frac{1}{\omega C}\right) [Ω] $$
インピーダンスの大きさ
$$
Z=|\vec{Z}|=\sqrt{R^2+{\left(\omega L-\frac{1}{\omega C}\right)}^2} [Ω] $$
インピーダンス角
$$
\theta=tan^{-1}\frac{\omega L -\frac{1}{\omega C}}{R} [^\circ]または[rad] $$

アドミタンスによる並列回路に関する公式

アドミタンス

上の回路において次の式が成り立つ

$$
\vec{I}=\frac{\vec{V}}{\vec{Z}}=\frac{\vec{V}}{R+jX_L}=\vec{Y}\vec{V} [A] $$

ここで\(\ \vec{Y}\ \)をアドミタンスといい単位は\(\ [S]\ \):ジーメンスであり、次の式で表される

$$
\vec{Y}=\frac{1}{R+jX_L}=\frac{R}{R^2+{X_L}^2}+j\left(-\frac{X_L}{R^2+{X_L}^2}\right)
$$

この式を実部と虚部に分けるとそれらは次の式で表される

$$
実部 \frac{R}{R^2+{X_L}^2}=g  虚部 \frac{X_L}{R^2+{X_L}^2}=b
$$

つまり、複素アドミタンスは次の様に表すことができる。

$$
Y=g+jb
$$

ここで\(\ g\ \)をコンダクタンス、\(\ b\ \)をサセプタンスといい、単位は\(\ [S]\ \)を用いる。

並列回路のアドミタンスの計算

$$
\vec{I}=\vec{I}_1+\vec{I}_2+\vec{I}_3\\
=\vec{Y}_1\vec{V}+\vec{Y}_2\vec{V}+\vec{Y}_3\vec{V}\\
=(\vec{Y}_1+\vec{Y}_2+\vec{Y}_3)\vec{V}
$$

ここで\(\vec{Y}_1+\vec{Y}_2+\vec{Y}_3\)を\(\vec{Y}\)とすると

$$
\vec{I}=\vec{Y}\vec{V}
$$

合成アドミタンスは複素数表示を用いると次の様になる。

$$
\vec{Y}=(g_1+g_2+g_3)+j(b_1+b_2+b_3)=g+jb [S] $$

\(\ \vec{V}\ \)と\(\ \vec{I}\ \)の位相差は次の式で表される。

$$
\theta=tan^{-1}\frac{b}{g} [^\circ]または[rad] $$

共振回路に関する公式

直列共振

RLC直列回路において、インピーダンスは次式のようになる。

$$
\vec{Z}=R+j\left(\omega L-\frac{1}{\omega C}\right) [Ω] $$

ここで\(\ \vec{Z}\ \)の虚部が零になるとき(リアクタンスが打ち消し合う)を直列共振という。(\(\ \omega L = \frac{1}{\omega C}\ \))

共振周波数

共振状態は周波数によって生じる。その時の周波数を共振周波数といい、次式で表される。

$$
F_0=\frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}
$$

共振時の電流(最大電流)

$$
I_0=\frac{V}{R} [A] $$

Q値(電圧値の比率)

$$
Q=\frac{V_L}{V}=\frac{V_C}{V}=\frac{\omega L}{R}=\frac{1}{\omega CR}
$$

Q値のは先鋭度ともいう。

並列回路

$$
\vec{Y}=\frac{1}{R}-j\left(\frac{1}{\omega L}-\omega C \right)
$$

ここで\(\ \vec{Y}\ \)の虚部が零になるとき(サセプタンスが打ち消し合う)を並列共振という。(\(\ \omega C = \frac{1}{\omega L}\ \))

共振時の電流(最小電流)

$$
I_0=\frac{V}{R} [A] $$

Q値(電圧値の比率)

$$
Q=\frac{\omega L}{R}=\frac{1}{\omega CR}
$$

Q値のは先鋭度ともいう。

回路網の計算に関する公式

キルヒホッフの法則

交流回路においても直流回路で学んだキルヒホッフの法則は適用できます。こちらの記事を参照してください。

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重ね合わせの理

複数の電源が存在する回路網において、各線路の電流はそれぞれの電源が単独で存在したときに流れる電流の総和と等しいという定理。

上の回路網の各線路の電流を計算する際には、各電源が単独で存在する場合の電流を足し合わせることで求めることができる。

上の画像は\(\ E_1\ \)のみの電源を考えた場合の回路である。

上の画像は\(\ E_2\ \)のみの電源を考えた場合の回路である。

それぞれの電流の向きに注意をしてそれぞれの電流を足し合わせることにより、元の電流の値を求めることができる。
よってそれぞれの電流は次式のようになる。

$$
\left\{\begin{array}{l}
\vec{I}_1=\vec{I}_{11}+\vec{I}_{12}\\
\vec{I}_2=\vec{I}_{21}+\vec{I}_{22}\\
\vec{I}_3=\vec{I}_{31}+\vec{I}_{32}
\end{array}\right.
$$

鳳・テブナンの定理

次のような回路から\(\ I_3\ \)を求めることを考える。

次に、電源がある回路と電源がない回路に分ける。

ここで\(\ V_0\ \)を求める。
また、この際、電源が複数ある場合はキルヒホッフの法則などを用いて求める。

続いて、分けた電源側の回路の電源をショートする。

ここで\(\ Z_0\ \)を求める。
分けた端子間のインピーダンスを全て合成して求める。

これまでに求めた『電圧』と『合成抵抗』を用いて等価回路を構成する。

構成した等価回路から電流\(I_3\)を求める。

これらの手順により\(I_3\)を求める式は次のようになる。

$$
\vec{I}_3=\frac{\vec{V}_0}{\vec{Z}_0+\vec{Z}_3} [A]  \vec{V}_3={\vec{I}_3}\times{\vec{Z}_3} [V] $$

三相交流回路に関する公式

三相交流回路

\(\ frac{2}{3}\pi\ (120[^\circ])\ \)ずつ位相差がある交流を三相交流という。

瞬時式

$$
v_a=V_m sin(\omega t) [V]\\
v_b=V_m sin(\omega t -\frac{2}{3}\pi) [V]\\
v_c=V_m sin(\omega t -\frac{4}{3}\pi) [V] $$

実効値

$$
V=\frac{V_m}{\sqrt{2}} [V] $$

ベクトル

曲座標表示では次のようになる。

$$
\vec{V_a}=V \angle 0 [V]\\
\vec{V_b}=V \angle -\frac{2}{3} [V]\\
\vec{V_c}=V \angle -\frac{4}{3} [V] $$

Δ結線・Y結線

Δ結線(デルタ結線)

線電流は相電流の\(\ \sqrt{3}\ \)で、位相差は\(\ \frac{\pi}{6}(30^\circ)\ \)である。

相電圧 \(\ E_a=V_{ab}\ \) 線間電圧
相電流 \(\ \sqrt{3}I_{ab}=I_a\ \) 線電流

Y結線(スター結線 or ワイ結線)

線間電圧は相電圧の\(\ \sqrt{3}\ \)で、位相差は\(\ \frac{\pi}{6}(30^\circ)\ \)である。

相電圧 \(\ \sqrt{3}E_a=V_{ab}\ \) 線間電圧
相電流 \(\ I_a’=I_a\ \) 線電流

三相電力

$$
P=\sqrt{3}VIcos\theta [W]\\
I:線電流 V:線間電圧 cos\theta:力率
$$

Δ-Y変換

Δ結線をした平衡負荷を等価のY結線に置き換えると、各相の負荷はΔ結線時の\(\ \frac{1}{3}\ \)になる。